家に帰ってきてテレビをつけてチャンネルをまわしていると、ちょうどテレビ朝日の報道ステーションが終わる寸前でした。そこで古館伊知郎キャスターが「先ほどフィレンツェで泣いて謝っている女子大生が映っていましたが、もっとおおらかでもいいのではないかと思います」と言って、番組は終わりました。
報道ステーションを全部見ていないので推測なのですが、これはイタリアのフィレンツェの世界遺産の大聖堂に自分たちの名前と大学名をマジックで落書きした岐阜市立女子短大の女子大生のことを言っているのだと思います。その後のフジテレビのニュースで女子大生がフィレンツェに行って大聖堂の館長に謝罪しているニュースをやっていたので、ほぼ間違いないと思います。
フジテレビのニュースでは女子大生が館長に泣きながら謝罪し、館長が女子大生を抱き寄せ「わざわざ謝罪に来てくれてありがとう」という内容の言葉をかけていました。イタリアの地元メディアは「信じられないほどの誠実な対応」と評価していました。
というのも、この大聖堂はいたるところ世界中の観光客の落書きだらけなのです。私が海外サイトで見た写真では、壁一面落書きだらけで、英語や他のヨーロッパの言葉、そして日本語の文字がひしめいていました。その中に、他の名前だけの落書き、例えば「鈴木」とか「ひろし」とか書かれていても、誰かは特定できません。しかし、女子大生たちは大学名と名前を書いたので特定されてしまったのです。大きな大学ならわかりませんが、岐阜市立女子短大は小さな学校なので、その時期に大聖堂を訪れたグループは何人も名前を落書きすれば特定されてしまうのです。
しかし、大聖堂は落書きだらけで、当然謝罪に海外からやってくる人なんてまずいません。それを、日本でニュースになってバッシングを受けたからとはいえ、わざわざイタリアまでやってきて謝罪した女子大生を、館長はキリスト教の精神で寛大に扱ったのです。岐阜市と姉妹都市の関係を結んでいるフィレンツェは、女子大生たちの真摯な反省態度を見て、彼女たちを友好のための親善大使に任命しました。
最初は小さな気持ちで落書きしてしまった彼女たちですが、今は心から反省していますし、その心を受け止めて許した館長やフィレンツェは、すばらしいと思います。
しかし、このニュースに対して「もっとおおらかな方がいい」と言う古館キャスターの言葉は意味がわかりません。今回はたまたま館長やフィレンツェが優しかっただけで、世界遺産に落書きをすることはとても重大なあやまちです。
あなたは外国人観光客が金閣寺に落書きしたり、縄文杉をのこぎりで切ったりしたら許せますか?外国人観光客が自分の家の壁にスプレーで落書きをしていったら許せますか?
館長やフィレンツェの対応を「おおらかですばらしい」と言うのならわかるのですが、「もっとおおらかな方がいい」というのはどういう意味なのでしょうか。日本人もイタリア人を見習って何でも許すようにした方がいい、という意味でしょうか。もしそうなら、秋葉原無差別殺傷の加藤容疑者も、家庭環境や職場環境に問題があったんだね、かわいそうだから謝ればいいよ、ということになるのではないでしょうか。
古館キャスターはかつて、プロレス実況中継の天才でした。そういう栄光があるからこそ、バカはさらさないのでほしいのです。なんの栄光もない久米宏とかが何か言っても、「ああ、こいつはバカだな」と思うだけですが、かつてプロレス実況に心酔した人たちにとっては、今の古館キャスターのていたらくぶりは見ていて涙が出てくるのではないでしょうか。
そんな、かつての古館ファンに「おれのバカっぷりを見ても許せるような、おおらかな気持ちでいろ」とでも言いたいのでしょうか。


